【コラム|クラヴマガ】生理学からみるクラヴマガ理論 -その1「生理学との関連性」

この記事では、生理学の観点から見たクラヴマガを解説しています。

クラヴマガは反射神経やストレスなど、実戦で陥りやすい状況を生理学的に捉えて研究されたテクニックが多く、いかに人体の特性を利用していることがわかります。


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条件反射

無意識で体が動く仕組みをつくる

クラヴマガでは、急な攻撃や接触に対して、頭で考えずに体が自然と反応することが大切です。

これは反復訓練をしたことにより身につく「条件反射」と呼ばれる反応で、何度も同じ動きを繰り返すことで、体が自動的に動くようになります。

条件反射を身につける方法

  • 繰り返しの練習:クラヴマガのトレーニングでは、何度も同じ防御や反撃の動きを行います。これにより、脳と筋肉の間の神経回路が強化され、条件反射が身につきます。
  • 素早い反応:条件反射を身につけると、相手の攻撃に対して頭で考えるよりも先に体が反応するので、危険を回避しやすくなります。たとえば、胸ぐらをつかまれたときに無意識にテクニックが出せるようになります。

ストレス

危険な時のストレス反応を利用する

実際に危険な場面に遭遇すると、体は「ストレス」を感じます。

このストレス反応が体のさまざまな変化を引き起こし、普段通りに体が動かなくなることもあれば、反対に身を守る準備を整えることもあります。

クラヴマガのトレーニングは、こうしたストレスに対する体の反応をに慣れ、さらにそれを利用して、自分を守る力を高めます。

ストレス下での体の変化

  • 心拍数の上昇:危険を感じると心拍数が上がり、体全体に酸素が速く行きわたるようになります。これにより、筋肉に素早くエネルギーが供給され、素早い反応が可能になります。
  • 集中力の向上:ストレスがかかると視覚や聴覚が研ぎ澄まされ、相手の動きに集中しやすくなります。クラヴマガでは、この集中力を生かして、相手の動きを察知して的確に対処します。

アドレナリン

いざという時に力を引き出すホルモン

「アドレナリン」は、ストレスを感じたときに体内で分泌されるホルモンで、瞬時に力を最大限引き出す働きがあります。

クラヴマガのトレーニングでは、アドレナリンが出ている状態で冷静に動けるようになることも目指しています。

アドレナリンの効果

  • 筋力の増加:アドレナリンが分泌されると、通常よりも力が発揮しやすくなります。これにより、いざというときに相手を押しのけたり、逃げるための瞬発力が増します。
  • 痛みを感じにくくする:アドレナリンの働きで、痛みが一時的に軽減されます。危険な状況でもすぐに動けるため、相手の攻撃をかわしたり、カウンターを入れたりするのが容易になります。

交感神経

心拍数と「戦うか逃げるか」反応(Fight or Flight)

クラヴマガのような格闘技術では、心拍数が急上昇する状況に適応するためのトレーニングが行われます。

緊張や恐怖などに対する「戦うか逃げるか」反応(ファイト・オア・フライト)は、自律神経系(交感神経)によって制御されています。

交感神経の効果

  • 心拍数と血流の増加:危険が迫ると、交感神経系が活性化され、アドレナリンが分泌されます。これにより心拍数が上がり、筋肉への血流が増加し、短時間で爆発的な力を発揮できるようになります。

密接に関連するクラヴマガと生理学

ここからは、さらに深く掘り下げて、クラヴマガと生理学の関係を詳細に解説します。

ここでは、より専門的な生理学の知見を活かし、クラヴマガにおける戦闘・防御の際の身体の反応や、効果的に技術を発揮するための要素について掘り下げていきます。

反射神経「反応速度と神経系」

クラヴマガでは、相手の攻撃に対して即座に反応することが重要です。

この反応速度には、身体が刺激に反応する時間、すなわち「反射」や「反応時間」が関係します。

クラヴマガのトレーニングでは、外部の刺激(相手の攻撃や接触)に対して瞬時に反応できるようにするため、神経系の働きが重視されます。

生理学的背景

  • 反応速度を高めるためには、神経系が情報を素早く伝達することが重要です。クラヴマガでは、特に脳と筋肉を結ぶ運動神経の発達が鍵となります。
  • 繰り返しの練習によってシナプスが強化され、体が刺激に対して無意識に反応できるようになります(「条件反射」)。

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骨格筋「筋肉の使い方と筋繊維の役割」

クラヴマガには、パンチやキックなど瞬発力が求められる動作が多くあります。

これには、速筋(瞬発力を生む筋繊維)と遅筋(持久力に優れた筋繊維)の役割が重要です。

生理学的背景

  • 速筋(白筋):短時間で力を発揮する筋繊維で、パンチやキックなどのスピーディな動作に利用されます。クラヴマガの打撃技術はこの速筋を主に使用し、強力な瞬発力が求められます。
  • 遅筋(赤筋):持久力に優れており、特に防御姿勢の維持や長時間のトレーニングでの安定した動作に役立ちます。

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交感神経「アドレナリンサージとファイト・オア・フライト」

「アドレナリンサージ(Adrenaline Surge)」とは、体が強いストレスや危険を感じたときに、アドレナリン(別名エピネフリン)が急激に大量に分泌される現象です。

これはいわゆる「戦うか逃げるか(ファイト・オア・フライト)」反応の一部であり、身体を一瞬で戦闘態勢に切り替える働きがあります。

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急所への攻撃と生理学

クラヴマガは、実戦での即効性を重視しているため、人体の急所に的確に攻撃する技術が含まれています。急所への攻撃は、短時間で大きな効果を得るためのポイントとして生理学的な理解が活用されます。

生理学的背景

  • 急所(目、鼻、喉、関節、下腹部など)には、敏感で防御しにくい箇所が多く、痛みや衝撃が全身に大きく影響します。
  • たとえば、喉への攻撃は呼吸を一時的に阻害し、相手を動揺させることが可能です。また、下腹部への攻撃は痛みとともに筋肉が収縮し、相手の動きを一瞬止める効果があります。

まとめ

クラヴマガの技術は、実際に体がどう反応するかを科学的に理解し、効率よく使えるように生理学の知識が取り入れられています。

これにより、相手の急所を狙ったり、ストレス下でも効果的に動けるようになったりと、実践的な護身が可能になるのです。生理学的知識を持つことで、クラヴマガのトレーニングがより効果的かつ安全に行えるようになるでしょう。

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