刃物の脅威と攻撃

新幹線内殺傷事件や、富山の警察官刺殺事件が記憶に新しいかと思いますが、ここ最近は、刃物による事件があとを絶たない状況にあります。
未然に防げるものから、予測できないものまで様々な状況で事件は起きています。
ここでは、刃物による攻撃方法の特性や、護身方法をご紹介します。

※ここに書かれていることが全てではありません。

刃物に対する護身術には、大きく分類すると「脅威への対処」と「攻撃への対処」があります。
“脅威”は刃物で脅されている状況を指し、”攻撃”は刃物で攻撃(刺す、切りつける)をしてきている状況を指します。

刃物での脅し方と刺し方

刃物での脅し方

脅されている状況で、襲撃者がすぐに命にかかわる攻撃をすることはありません。
なぜなら、襲撃者は何らかの要求があって脅しているからです。(金品の要求等)
首回りや胴回りに刃をあてて脅すケースが多くあります。
金銭や金品等、何らかの要求がある場合は、速やかにそれを渡しましょう。
ここで物を惜しんで出し渋ると、命を持って行かれることになりかねません。
何から何を守りたいかを考えることは重要なことで、ほとんどの方は、金品<命 のはずです。

刃物での刺し方

殺傷そのものが目的の場合は、金品等の要求はなく、突然襲ってくることも多くあります。
刃物での刺し方・切り付け方は以下のような方法があります。

①刃物を順手で持ち、下からえぐるような刺し方のアンダースタブ。

②刃物を順手に持ち、真っ直ぐに刺してくるストレートスタブ。

③刃物を逆手に持ち、上から下へ振り下ろすような刺し方のアイスピックスタブ。

④刃物を順手で持ち、左右に斬りつけるスラッシュ。

攻撃方法は、無差別、怨恨、強奪等により異なり、襲撃する側の精神状態でも変わってきます。
例えば、刃物を順手で持ち、両手で抱えるようにし真っ直ぐに刺してくる場合は、襲撃者自身が緊張により体が硬直していることが多いといえます。

握り方でわかってしまう?!

実は、刃物の握り方で刺し方や刺してくる位置が大まかにわかることがあります。
順手で刃物を持っている場合は、真下から真横までの45度の範囲内が想定されます。
反対に逆手で刃物を持っている場合は、真上から真横までの45度の範囲内が想定されます。
いずれも、関節の可動範囲からの予測なので必ずではありません。あくまで目安です。

逃げたら危険?!

逃げられるだけの距離がある場合は、迷わずに走ってる逃げたほうがいいでしょう。
逃げることも立派な護身術です。
ですが、後ろを向いて逃げると、反対に危険な場合があります。
それは、追いつかれてしまう距離です。
後ろを向いて走り出すまでにタイムラグがあるので、襲撃者の方が時間的に優位になります。
また、後ろを向いているということは、一切の防御は出来ない状態になります。
逃げられない距離にいる場合は、出来るだけ襲撃者との距離をとり、背を向けないことです。
およそ6メートル距離を保てれば、襲撃者全体を視界に入れられ、動きを認識しやすくなります。

 

背中をみせたくなる反射行動

至近距離で攻撃されると、人は無条件反射で刃物を持っている相手の腕を掴もうとしますが、背を丸め後ろを向いてしまうという最悪な行動をとることもあります。
これは、急所が多く集まる人間の前面の中心部分を守る反射行動ですが、刃物を使った攻撃の場合、その行動は無意味となります。
背後からでも刺したり斬りつけたりすれば、血管、内臓を損傷させ、大量の出血により死に至らしめることが出来るからです。
人間の目は後ろには無く、防御できる人間の腕は前方にしか機能しないことを忘れてはいけません。

 

時は命なりタイムイズライフ

攻撃に対して反応できる時間がないということは、襲撃者にとっては攻撃する時間があるということです。
また、攻撃に対して反応できない距離にいるとも言え、襲撃者にとっては攻撃できる距離であると言えるでしょう。
反応が出来れば、逃げる若しくは対処するための時間と距離を稼ぐことができます。
付近にある物イス等を障害物にする、小物を投げて相手の動きを止める、長物である棒等で近付けないようにする。
時間と距離を稼ぐことが護身術では一番必要なことです。
また、護身術はテクニックのトレーニングだけでなく、いかに早く反応できるかのトレーニングでもあります。
人間は、経験したことのないことが起きると、過去の経験と照らし合わせ、何が起きているかを整理して状況を理解しようとします。
この時にフリーズし、体が一瞬動かなくなるわけです。
しかし、突発的に襲われる状況トレーニングを繰り返し行うことで、「経験したことがない」が、「経験のある」になり、頭で整理しなくても体が早く反応するようにできます。
反応する時間を作りだせれば、襲撃者の攻撃をする時間を無くすことができます。
時間と距離は「命」に直結しているのです。

脚が命を救う

襲撃者との距離を取ることが大切なことは上記の通りですが、攻撃されない距離から攻撃できる距離に詰められそうになった場合、防御で最初に使うのは腕ではなくて脚です。
人間の脚は体の中で1番長いパーツなので、前蹴りで襲撃者との距離をとり、刺されないスペースを確保することに役立ちます。
前蹴(フロントキック)りで脚を出すと脚を刺されるのでは?
という意見がありますが、大抵は靴をはいています。
また、襲撃者が攻撃するためには、刃物を持っている腕を一旦後ろに引かなければ”刺す”という行動はできません。
前蹴り(フロントキック)は、相手が腕を後ろに引いた時に、相手への股間へ打ちます。
こうすることにより、直接的に刃物が接触することはありません。
たとえ脚を刺されたり斬られても、首や胸等を刺されて、致命傷を負うよりも命が助かる可能性は高いということです。
また、股間を蹴られても平然と攻撃できるほど人間は頑丈には作られていませんし、たとえ前蹴りが当たらなくても、股間付近に脚が飛んでくると咄嗟の反応で腰を引いてしまうものです。※男性であればよく分かると思いますが…

 

腕は最後の砦

走って逃げられる距離、逃げられない距離、脚を使う距離、そして最後は、腕(手)を使って防御する距離です。
この距離では、脚を使うためのスペースがない状態となりますので、防御は腕のみとなります。
この距離は2番目に最悪な状態ですが、クラヴマガでは、「バースティング」及び「キャッチ」と呼ばれるテクニックを使います。「バースティング」とは、瞬発的な動きを意味し、襲撃者が攻撃をしかけてくる瞬間に一気に前へバーストし防御と攻撃を同時に行います。「キャッチ」とは、攻撃を受けた際、咄嗟に相手の腕を掴もうとする人間の条件反射を利用したテクニックです。
どちらのテクニックも、条件反射や無条件反射を利用したテクニックですが、いずれも防御と同時に打撃を入れる、または防御のあとに出来るだけ早く打撃を入れることが必要です。

2度目にご用心

運良く最初の攻撃(ファーストアタック)を防御できたとしても、襲撃者は攻撃を継続します。
殺傷が目的の人間が1度の攻撃で終わることはありません。刃物による攻撃のほとんどが1秒間に2回程度の反復運動があるといわれています。
防御だけに徹した場合、防御のループに陥ってしまい、最後は必ず攻撃をうけてしまいます。
この連続した攻撃を止めるのが”打撃”であり、以下の2つの効果があります。

①物理的な妨害
打撃により、襲撃者が連続した動きをし難くします。

②神経学的な妨害
人間は、脳からの信号で体を動かしていますが、打撃でショックを与えるととによってその信号を遮断します。

打撃でショックを与えることにより、物理的・神経学的に襲撃者の反復運動を止めます。
打撃は拳を使う必要はなく、手のひらをつかった掌底打ち(パームヒールストライク)で問題ありません。
むしろ、拳を使うと怪我をして相手の腕や手首等を”握る””掴む”という動作ができなくなる可能性があり、逃げるための動作が制限されてしまいます。日頃から拳を武器として鍛えている格闘家や武道家以外は拳での打撃はオススメできません。

 

今回の記事はここまでですが、次回は襲撃者の腕をコントロールする方法や、最も最悪な「馬乗り」状態での対処方法をご紹介したいと思います。

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HIDETSUGU OKUBO

HIDETSUGU OKUBO

ゼネラルディレクター&チーフインストラクター護身術 JET KRAVMAGA
1973年生まれ 株式会社JAM代表取締役。2013年ジェット・クラヴマガを設立。クラヴマガを指導するため、札幌、苫小牧、東京、千葉を往復する毎日。護身術/防犯/応急救護/ 詳しいプロフィールはこちら
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